アレルギーとは、身体の外から入ってきた異物に対する、生体の過剰な免疫反応のことをいいます。元来、身体には外から入ってきた異物を排除しようとする、「免疫」という機能が備わっています。
この免疫が過剰に働き、通常は体に害のないもの(食べ物、ハウスダスト、花粉など)にまで反応してしまうことがあり、これをアレルギー反応と呼びます。
アレルギーの原因
季節性アレルギー
花粉(スギ・ヒノキ・カモガヤ・ブタクサなど)
季節性アレルギーの原因としては、主にスギ(2-5月)、ヒノキ(3~5月)、カモガヤ(3~9月)、ブタクサ(8~10月)などの花粉があり、毎年ほぼ同じ時期に発症します。
通年性アレルギー
ダニ・ハウスダストなど
1年中症状がある場合には、通年性アレルギーと呼ばれ、ダニやハウスダストが原因のことが多くなります。季節的な変動はありますが、湿度の高くなる梅雨から夏や、暖房をして換気が少なくなる冬に増悪します。
食物アレルギー
食物アレルギー
特定の食物に対するアレルギー反応です。原因となるアレルゲンとしては、乳児期以降で小麦、大豆、鶏卵、牛乳など、学童期以降では、甲殻類、果物、そば、魚類、ピーナッツなど、加齢に伴い原因が変わっていくことがあります。乳幼児の5-10%、学童期の1-3%が食物アレルギーを持っているといわれています。
子供のころのアレルギーは、多くが成長に伴い症状が落ち着いてきます。(耐性獲得)一方で、大人のアレルギーは耐性獲得しにくく、原因に対する継続的な除去が必要となることが多いです。
寒暖差アレルギー
寒暖差アレルギー
寒暖差アレルギーとは、冬の寒い時期に発症することが多く、帰宅時に暖かい部屋に入室する際の外との気温差、入浴前後の気温差などで起こります。
眼科におけるアレルギー
アレルギー性結膜炎
春季カタル
春季カタルとは、春に急激に悪化するアレルギー性結膜炎の重症型で、幼児から少年期に多く、アトピー性疾患の方にも多いです。病態としては、瞼の嚢の結膜が石垣状に増殖し、重症化すると角膜潰瘍が発生し、強い痛みと視力低下を起こします。
治療は、抗アレルギー薬やステロイド点眼に加え、最近では免疫抑制薬(タクロリムス)が効果を発揮することがわかっています。
コンタクトレンズとアレルギー
軽症の場合は、レンズの種類を変更したり、点眼治療することにより改善します。重症の場合は、巨大乳頭結膜炎を起こします。
根本的な治療は、コンタクトレンズの使用中止です。症状は、かゆみだけではなく、レンズが汚れやすい、ずれやすい、ごろごろする、メヤニが出るなどで発見されることもあります。
薬による医原性アレルギー
アレルギーを治すための点眼薬や内服薬でアレルギーを起こす場合があります。
点眼や内服を続けることで症状が悪化するため、原因の判断が非常に困難です。原因が判明した場合には、薬の使用を即刻中止します。
アレルゲン検査(血液検査)
アレルギーの原因を同定するには、血液検査が有用です。採血管1本の採血で、結果は1週間程度で判定できます。費用は、健康保険3割負担の方で約5000円程度です。当院でお勧めしているセットは「Viewアレルギー39」です。
- ◎Viewアレルギー39項目
- 室内塵:ヤケヒョウダニ、ハウスダスト1
- 動物:ネコ皮屑、イヌ皮屑
- イネ科花粉:カモガヤ、オオアワガエリ
- 雑草花粉:ブタクサ、ヨモギ
- 樹木花粉:スギ、ヒノキ、ハンノキ、シラカンバ
- 昆虫:ガ、ゴキブリ
- 真菌・カビ:カンジダ、アルテルナリア、アスペルギルス、マラセチア
- 職業性:ラテックス
- 食物:卵白、オボムコイド、ミルク、大豆、ピーナッツ、小麦、ソバ、米、豚肉、鶏肉、牛肉、マグロ、サケ、サバ、エビ、カニ、バナナ、キウイ、リンゴ、ゴマ
アレルギー性結膜炎の治療
- 抗原の回避
- 抗アレルギー薬・ステロイド点眼
- 免疫抑制薬点眼
- 抗アレルギー薬内服治療
1.抗原の回避
最も大切な治療です。まず、何が原因のアレルギーなのかを診断し、その原因が避けられるものでしたら避けましょう。ハウスダストやダニ、カビなどは、徹底的な 掃除やこまめな換気、そして妨ダニ加工の寝具などで減らすことができます。
また、花粉に反応している場合は、花粉の多く飛散している日には外出を避ける、ゴーグルやマスクで防ぐ、外出から帰ったら、玄関の外で衣服をよく払って抗原を家の中に持ち込まないなどの対策が有効です。
2.抗アレルギー薬・ステロイド点眼
アレルギー反応は、抗原がIgE抗体を介してマスト細胞という細胞を脱顆粒させてることから始まります。 抗アレルギー薬は、このアレルギー反応の最初の引き金となっているマスト細胞を脱顆粒させないようにします。
そのため、点眼する際は、アレルギー反応が始まる前がよいとされています。花粉症の方は、花粉の飛散前からの点眼が有効です。アレルギー反応が繰り返し起きると、慢性炎症を起こし、主に好酸球が、角膜や結膜などの眼表面の組織を傷害します。
好酸球を抑制するには、現在のところステロイド剤が最も効果的な薬です。ただし、副作用として眼圧上昇があり、緑内障のリスクファクターとなりますので、使用には眼科での検査が必須です。
3.免疫抑制薬点眼
春季カタルに対する点眼薬です。重症のアレルギー結膜炎があり、抗アレルギー薬やステロイドに抵抗性を示すときに適応となります。タクロリムス点眼やパピロックミニ点眼が有用です。
4.抗アレルギー薬内服
通常の点眼薬に内服を併用することで、効果が高まることがあります。
アレルギー対策となる食べ物
発酵食品
ヨーグルト、納豆、キムチ、味噌などの発酵食品には、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が多く含まれており、腸内環境を整えるのに有効な食品です。腸内環境が悪化すると、腸内で悪玉菌が増加し、免疫系のT細胞のバランスが崩れ、Th2細胞が優位に働き、アレルギー症状が起こりやすくなります。
青魚、エゴマ油、亜麻仁油
青魚に含まれるDHA・EPAや、エゴマ油・亜麻仁油などのω3脂肪酸を含む食品は、アレルギー症状を軽減する作用が報告されています。